鉄摂取で貧血が改善しないのはたんぱく質不足?肉・魚も摂りたい理由


「鉄を摂っているのに、貧血がよくならないのはなぜ?」と思っていませんか?

実は、貧血がなかなか良くならない理由が”たんぱく質不足”の場合があります。

なぜなら、鉄欠乏性貧血の人がふやしたいヘモグロビンは、鉄とたんぱく質の組み合わせでできているからです。 

鉄はたんぱく質と一緒でないと、身体の中で有効活用されないのです。
貯蔵鉄と言われるフェリチンも鉄とたんぱく質の組み合わせです。

この記事では、鉄について、摂っているのになかなか効果が上がらなくて悩んでいる方が、
鉄の種類と食べ方をもう一度見直せるよう、鉄の摂取吸収の仕組みと吸収をよくする方法を説明します。

この記事を読み終えて、「たんぱく質について知りたい」と思ったら

たんぱく質の摂取法 

も参考にしてください。

1 貧血には鉄、ってなぜ?

1−1 一番多いのは鉄欠乏性貧血

貧血の人の割合は、20歳以上の女性で平均10人に1人、
30歳代や40歳代では、5人に1人が貧血、という結果が出ています。
(厚生労働省 国民健康保険・栄養調査報告より)

中学2年生以上の思春期女性の貧血も増加傾向。

貧血の原因は色々ありますが、一番多いのが、鉄不足でおきる

鉄欠乏性貧血

です。

1−2 貧血の人は血液だけでなく貯蔵鉄も不足状態

体内の鉄は70%が赤血球の中にあり、
基本的にリサイクルで賄われています。

いざという時のために、
フェリチンなどの形で25%ほどは貯蔵鉄としてストックされています。
成長に必要な分や、出血して失った分など必要に応じて取り出すことで、
大切な酸素運搬機能が不足しないよう調整してされています。

しかし、1mg程度は汗や尿などから出てしまうので、
毎日少しずつ補給しておかないと、
徐々に不足していきます。
ストックも使い尽くして、
赤血球の成分として使える分が不足すると、
貧血になってしまうのです。

良く運動をしたり、
猛暑で大量に汗をかくなどがあると、
鉄が失われていきます。

また、月経がある女性は、
血液として体外に出てしまいます。

このため、月経のある女性は1日1mgの”吸収”では足りず、
常に鉄摂取を多めにするよう、心がけないと不足しますし、
過多月経の方は、さらに、常時鉄が不足しやすい状態にいることになります。、

1−3 1日の食品からの摂取量と吸収率

1日の推奨される食品からの鉄摂取量(mg)は下の通りです。

年齢男性女性
月経無
女性
月経有
初期妊婦
・授乳婦
中後期妊婦
12〜14歳10.08.5
12.0

15〜17歳10.07.010.5
18〜49歳7.56.510.59.016.0

(日本人の食事摂取基準2020 厚生労働省より)

比較のために男性を入れておきました。 
子宮内膜症の治療などで月経を抑えている方もいらっしゃるので、
月経無にするとどうなるか、も入れておきました。
思春期で多く必要なのは、筋肉や骨髄に含まれる鉄分の確保のためで、
いわゆる成長に必要な分です。

鉄は糖質や脂肪と異なり、食べた分だけどんどん吸収されるわけではありません。
吸収率は、体内の鉄が欠乏状態の時は上がる、と言われていますが、
通常は、良くて20%、平均15%、食べ合わせが悪いともっと低いのです。

では、

いつもの食事では、ダメなの?

普通の生活で、どのくらい取れるものなの?

と、聞きたくなりますよね。

そこで、データを見ると・・・・

国民健康・栄養調査によると、
平均摂取量が 男性 7.9mg
       女性 7.2mg
となっています。

男性の方が少し多い、でもほんの少しの差ですね。
この差は、食事の総量からきているものと思われます。
女性だからといって増やしている様子は見られませんね。
特に気をつけていない、ということでしょうか。

必要量と比べると、女性の方がマイナスが大きい結果です。
月経のある女性の5人に1人が貧血になっているというのも
納得ですね。

食品
1食分あたり鉄(mg)1食分(g)
鶏卵
1.260
鶏レバー
5.460
牛ヒレ肉2.5100
あさり1.130
サンマ
1.7100
ひじき3.9
小松菜2.280
ゆで大豆1.450
カシューナッツ1.630
ゆでそば1.6200

日本食品標準成分表(7訂)から引用

一食あたりに含まれる鉄の量を見て、1日分の食品の組み合わせが思い浮かぶでしょうか。

単品の食事が多い、食品の種類が少なめ、という方は工夫が必要かもしれませんね。

2 食べる量だけでなく吸収率も考慮して鉄を食べる

鉄は吸収されにくいですが、食品の量を増やせば確保できそうです。
でもそのために食事量を増やすのは、困る、
という方も多いでしょう。

それでは、カロリーに影響せず、
吸収率をあげる対策を
探りましょう。

2−1 鉄の吸収率を上げるためにたんぱく質が必要

鉄の吸収率をあげるためには、たんぱく質やビタミンCが必要です。

なぜなら、食品中には、ヘム鉄と非ヘム鉄があり、

非ヘム鉄は、
ビタミンC※とたんぱく質の手助けがないと吸収されないからです。
   ※ 鉄イオンが酸化されたり還元されたりする時に作用します。 

さらに
機能する赤血球が作られるためには、
葉酸、ビタミンB12、B6、銅といった成分も必要です。

非ヘム鉄は植物性の食品に含まれています。

2ー2 たんぱく質をとるなら動物性食品を加える

一方のヘム鉄は、そのまま吸収されます。
 吸収率は23〜25%くらい。
 非ヘム鉄の吸収率は1/5の5%です。

とったそのまま吸収されるヘム鉄、
ビタミンCなどと、たんぱく質とがあれば吸収される非ヘム鉄。
赤血球を作るのにビタミンB 12、葉酸、他も必要。

それらは、どんな食品に多く含まれているでしょうか?

下の票をご覧ください。

ヘム鉄非ヘム鉄たんぱく質ビタミンCビタミンB12葉酸
レバー、牛肉
カツオ、マグロ
貝、ジャコ
青菜
ひじき、のり
卵黄
大豆、大豆製品

非ヘム鉄を含む食品と、ビタミンB12を両方取ろうとすると、
動物性食品が必要になってきます。
そこにはもれなく”ヘム”鉄がついてくる、という関係です。

3 野菜の中でも鉄を多く含むのは濃い緑のもの

3−1 野菜、緑の濃い葉を意識して取り入れる

「野菜を食べる」意識はかなり浸透しているようです。

「野菜が不足しているかもしれない、でもなるべく野菜を食べるように気をつけています。」

という方達がよくとっている野菜は、共通点があります。

きゅうり、トマト、レタス、キャベツ、・・・。

カット野菜のパックに入っているものと、そのまま洗うだけで食べられるもの。

わかりやすいですね。

食品一食あたり鉄(mg)一食あたりたんぱく質(g)一食分標準的な量(g)
きゅうり0.20.770g(1/2本)
トマト0.20.8中1個(120g)
キャベツ0.2
0.970g(付け合わせ)
レタス0.30.6100g(大2.5枚)
ほうれん草1.41.570g
小松菜2170g
春菊1.21.670g

ほうれん草、小松菜、春菊など 緑の濃い葉と比較して見ました。

緑の濃い葉は、鉄だけでなく、たんぱく質も多く含んでいます。

肉の中では、牛肉に比較的鉄が多いことは、草をたくさん食べているからかもしれません。

植物は葉緑体を合成するときに鉄を必要としており、葉緑体でいっぱいの緑の葉には鉄が含まれるというわけです。

葉の中に含まれるのは、非ヘム鉄です。

吸収過程で必要なビタミンCとたんぱく質を一緒に含んでいるのも、よくできていますね。

ついでに、葉酸も、銅も、取れるので、貧血対策に「植物の葉」を取り入れることをお勧めします。

ベジタリアンの方は、
「葉」をたくさん食べられれば、鉄やたんぱく質が多く含まれますので、
野菜のバランスに気をつければよいといえますね。

そこまで気を配れない、というときには
動物性のたんぱく質と鉄を摂るのが続けやすい方法です。


3−2 鉄の吸収を妨げる成分を含む食品について

ここで、鉄の吸収を妨げる食品についても触れておきます。


お茶に含まれるタンニンや、
抗酸化作用があると人気のポリフェノールや、
同じような働きをするフィチン、
コレステロールの吸収を妨げると人気の食物繊維などは、
鉄に関しては、吸収を妨げます。


ただ、鉄がたくさんあれば、大丈夫。

それに、時間をずらす方法もあります。
例えば、お茶なら食事中でなく、食前、または食後30分以上開けて飲む、などです。


食べ合わせによる吸収阻害を気にするより、
食事の内容を豊かにする方を優先してください。

4 まとめ 

1 貧血対策は、食事を見直すいい機会と捉える。

2 鉄だけ取ればいいというものではない。忙しかったり、手軽さ重視で、
たんぱく質など他の栄養がおろそかになっていると効果が出ない。

3 動物性の食品を組み入れて、鉄とたんぱく質を一緒に取るのが効率が良い。

付録)

ここでは食事の取り方を中心にご説明しましたが、

鉄サプリメントや、薬品、強化食品などを使いたいけれど、
とりすぎが心配、という点について解説しておきます。

 鉄の一日上限量は、男性が50mg、女性が40mgとなっています。
普通の食事で摂っている平均量は 男性7.9mg、女性7.2mg(1日)ですので
特別なことをしない限り過剰の心配はありません。

そして、治療用の薬では1日100〜200mgを処方されます。
これは、不足している人の治療用のためですから、
医師の指示に従って使うもの。
サプリメントは 過剰摂取にならないためか
1錠あたり5mg程度と、薬とは段違いの少量になっています。


とはいえ、特に幼児では過剰摂取で急性中毒を起こすこともありますからご注意を。

また、通常、男性および閉経後の女性は、サプリメント等で過剰症を起こす心配があるので、摂取は避けた方が良いとされています。


この記事を書いた人

木春今日子