自分の状態を知った上で、望む状態に調整するために呼吸をうまく使いこなせるといいですね。頭に入れておいてください。
Contents
1 気合をいれる呼吸
だらけてしまって、気合が入らない時、さあ、これから気合をいれるぞ、というときに使ってください。
(1)気合いスイッチとは
呼吸で、自律神経を、交感神経モードにします。
交感神経とは、「敵がくる、戦うぞ」「命が危ない、逃げるぞ」という場面に適合するように全身を統括する神経。
血圧を上げ、血管を収縮させ、心拍を上げます。
現代の日常生活の中では、そこまで明確に差し迫った「命の危機」みたいなことはそう頻繁に起きないと思いますが、朝起きて、これから活動するぞ、という時には自然とこのモードに切り替わっていてくれると生きやすい、生活しやすい、モードです。
(2)交感神経のハブは背骨に沿って走っている
短く強く、「ハッ!、ハッ!」と息を吐き出してください。胸だけでやっている疲れてしまうので、息を吐きながら、一緒にお腹を凹ますように。
背筋を伸ばし、両手をお腹に当て、腹筋の強い動きを感じるのも良いかもしれません。
これからやること、活性化してエネルギーに溢れているイメージを思い浮かべ、腹筋のトレーニングも兼ねて疲れるまで続けてみてください。あまりやりすぎても過呼吸になってしまいますので、20秒または、30回くらいでひとくぎり。
(3)リラックスモードをたっぷりと
気合をいれるばかりでは、持ちません。季節の変わり目や昼夜の変わり目と関係なく人工的な環境で活動することが多い現代人は、意識的に調整していかないと交感神経モードのまま過ごすことが多くなっており、体調が崩れてから気づく人が多いです。
バランスを取るために意識して、次の「リラックスモード」を取り入れてください。
パフォーマンスを上げるには、
15分ごとに数分、
45分ごと5分、 90分ごとに5〜10分の休憩を入れ、
一日に5〜7時間の睡眠と睡眠前の90分をリラックスモードで過ごす必要があります。
2 リラックスする呼吸
高ぶった交感神経モードから、落ち着いて集中できる副交感神経モードに切り替える呼吸です。
緊張場面はもう終わっているのに、舞い上がってしまって気持ちが落ち着かない、そんな時に、使ってください。
(1)呼吸のリズムをゆっくりにする
交感神経モードにするときと逆にリズムをゆっくりにします。
副交感神経が優位になると、呼吸も、心拍も、下がります。呼吸を意識することでその状態を自分で先に作ってしまうイメージです。
(2)姿勢を整え、まず空気を外にもらし始める(吐く)
目を閉じて、背筋は伸ばし、まず吐き始めます。細く、ゆっくり。長く、勢いはつけずに息を吐けるだけ吐きます。口をすぼめてもいいし、鼻から少しずつでもいい。吐くことに集中して、コントロールしないと、細く長くゆっくりにはならず、すぐ吐ききってしまいますよね。強く吐き始めてしまったら、これも持ちませんよね。
とにかくゆっくり、どれだけ長くできるかの競争をしているかのように、「体の外に少しずつ息漏れさせる」イメージで吐くことに集中しましょう。
背筋を伸ばしたまま、吐ききったら、体の中の空気を全て絞り出すつもりでお腹を凹ましたり、背を丸めたり、左右に揺すったり、して見てください。肺は背骨を越えて左右の背中側にも広がっていますから、そこからも絞り出すし、お腹をへこませば、横隔膜を介して肺を下から押せますね。体を動かしながらとにかく絞り出して吐き出します。
(3)吐ききったら吸うのでなく「緩める」
吐ききるまで、体を揺すって息を絞り出すと、うっかり緩んで、息を吸ってしまいますね。そこで切り替えます。緩んで吸ってしまったら、そのまま少しずつ体に空気が入って行くのを止めずに吸って行きます。あとは、「息を吸う」のではなく、まず緩めます。
吐くために全身の筋肉を集中させたあと、「吸う」のではなく、緩めて空気を入れながら、背筋を伸ばし、そこからゆっくり吸い始めます。まずはおへその少し下(鉄棒に乗って、お腹が当たる位置)を意識してお腹を膨らませ、次に胸にも空気を入れて行きます。
入れ終わったら、力を緩め、自然に空気が出たところ、中間で終わります。
全身の力が抜けましたか?
まだならもう一回、集中してやると頭が空っぽになりますよね。
リラックスできたら、そのままゆっくり息をします。
3 落ち着いて集中する
2 のリラックス法は、人目のある場所だと、やりにくいですね。
「本日のメインイベント」を前に、緊張して上がってしまっている、締め切り前で焦ってミスしそう、プレッシャーがかかっている中、集中して最高のパフォーマンスを発揮したい、等々、
これから、「勝負」という時には、頭脳も感覚も研ぎ澄まされている、でも、心拍も落ち着いていて、心は静か、という状態が理想です。副交感神経モードで余分な力を抜き、なすべきことへの集中を作る呼吸です。
緊張する一場面、プレゼンテーションや試験の前などの待機時間に応用範囲の広い呼吸です。
(1)心から雑念を追い払う
プレッシャーに負けそうな時、心には恐れと不安がいっぱいです。恐れや不安に神経が苛まれていると、必要な集中ができず、余計イライラドキドキしてしまうことになります。
「かぼちゃがいっぱい」とか「失敗したからといって命がなくなるわけではない」とか、いろんなアドバイスがありますが、本当に大切なことであればあるほど、雑念はたくさん湧いてくるもの。
日頃から精神集中のトレーニングをしている人はもちろん、していない人にも効果があるのは、呼吸に集中することです。目を閉じてもいいし、閉じられる状況でなければ開けたままで大丈夫です。
(2)吐いて、止めて、吸って、止める
副交感神経モードにするので、ゆっくりした呼吸、吐き始めや吸い始めに力まないのは、上記2と同じです。
リズムは2よりも少し早く、5つ数える間だけ吐いたり吸ったりします。
吐いたあと、呼吸を止め、同じ数だけ数えます。吸った後も同じように呼吸を止めます。
ゆっくりですが、リズミカルな呼吸になります。数を数えているのに慣れたら、数の代わりに「できる、できる、できる・・」とか「やった、やった、やった・・」と心の中で呟き、口角をあげて微笑みながら続けて見てください。3分、または5分くらいで気持ちの変化があるはずです。
(3)吸うのは、鼻からのみ
呼吸法は様々あり、左の鼻の穴から吸って右の穴から出す、とか
鼻から空気を出す時に、舌を上の歯茎の裏に軽くつけて音を感じながらとか、
口を細く尖らしてそこからロウソクを吹き消すような細い吐き方をするとか、
色々あります。いずれも吸うときは鼻からのみです。口から直接息を吸うのは喉の粘膜を乾燥させたり、鼻毛のフィルターを介さず余分な塵埃をすることになるからです。
4 使いわけと習慣化
(1)呼吸のコントロールで自律神経の調整ができる
自律神経は、全身の機能を統轄していて、基本的には場面に合わせた調整をしてくれます。
しかし、現代の「ストレス」の中身は精神的なものが多く、知らず知らず交感神経優位に傾きがちで、バランスを欠き、体調を崩したり、パフォーマンスを落としたり、することが多いです。
呼吸は、自律神経がコントロールして、自分で意識しなくても休みなく続けてくれます。自分で意識して、吸う、吐く、止める、こともできます。
つまり、呼吸を介して、自分の意識と自律神経の調整をすることができるのです。
(2)使う場面ごとに意識して呼吸のコントロールを活用
心臓がドキドキ、心拍数が上がっている時には、意識して呼吸回数を減らし、心拍数を落とすことができます。心も落ち着いてきます。
コツは、吐くことに時間をかけ、吐き始め、吸い始めを緩やかにすること。
肩の上げ下げでなく、臍の少し下(鉄棒に乗った時にお腹が当たるところ)を意識することです。
呼吸中に腹圧をかけ続けることで、自律神経の分布が密な大動脈や腸管の周囲が刺激されるようです。
朝、ちっともピリッと目覚めが悪い時には、刺激をする短く強い呼吸を使いましょう。
(3)習慣化することで、自律神経の調整が早く確実にできるようになる
呼吸の使い分けに慣れ、的確にできるようになると、自律神経の調整回路が強化され、呼吸への意識集中が素早くなります。
緊張しているな→緩めよう→ゆっくりした呼吸→リラックス
の一連の流れが
緊張しているな→緩めようと思っただけで、自動的に呼吸が変化し、意識集中→リラックス脳波、と一連の変化が加速化するようになります。
5 まとめ
呼吸コントロールをマスターして、自律神経の調子を意識し、調整できるようになると、体調を整えやすくなり、パフォーマンスが上がります。